少し遅い正月休みを取得し、今回は熱海エリアへ飲み歩き旅。
いつもなら車中泊で飲み歩くところだが、
どうしても泊まりたい旅館があったので今回は電車でGO!!だ。

最近は酒場巡りと同時に温泉巡りもするようになり、
熱海エリアに行く時はと、ずっと気になってた温泉旅館がこの龍宮閣。

創業は昭和13(1938)年で、もともとは蕎麦屋だった建物を現在の主人の祖父母が買取り、旅館業を開業。
蕎麦屋時代を含めるとほぼ100年の百年旅館だ。

戦時中は大森区(現在の東京都大田区大森)の学童疎開を受け入れ、食糧難と戦いながら約10ヶ月間客室で授業を行っていたそうな。



映画『火花』ではこの旅館の前でも撮影が行われ、
旅館横の階段を桐谷健太くんが転げ落ちるシーンは、階段フェチの僕には特に印象深いワンシーンだった。



なんの因果かauのCM・三太郎シリーズで共演していた桐谷健太くん(浦島太郎)と菅田将暉くん(鬼)はこの映画でも共演され、
撮影の合間の休憩ではこの龍宮閣でひと息ついたとされる部屋がある。


それが今回のお目当ての部屋、月二號。



六畳間に広縁と、どこにでもあるような和室だが、
ここにはグッとくるスペースがある。
それは部屋の片隅にちらりと見える、あの階段の向こう側だ。

そこはテーブルと椅子が用意された、ただのんびり景色を眺めるための空間。
以前は海が一望できたそうだが、現在は目の前にマンションが建ってしまい、ちょっと残念な景色に。。。

それでも窓を開放し、風を感じながら割引になった寿司で缶ビールをキメるのはサイコーな時間だった。


ちなみにこのスペースは最初からあったわけではなく、
あとから押入れだったであろう場所をぶち抜いて爆誕させたもの。
おもてなしの発想もまたぶち抜けているぜ。。。

部屋でひと息ついたあとはこの宿のもうひとつのお目当て、温泉にライド温しようじゃないか。


この宿には湯槽の大きさが違う風呂場が2ヶ所あり、小さいほうの扇風呂の湯槽はメタボの僕がなんとかギリギリ入れるサイズ感。

このあと紹介する大きい方の湯槽と比べると1/5ぐらいの湯量しかないが、この小さなサイズ感だからこその存在意義を後ほど知ることとなる。

さてさてお待ちかね、
メインオブメインの湯がこちら。


真っ先に目に飛び込んで来たのは、まさに龍宮閣を象徴するかのような海中のウミガメと浦島太郎のタイル絵。

初代ファミコンの8ビットぐらいのドット感が、いま風に言えばエモい。
よく見ると龍宮閣の龍の字が竜になっているが、
タイルで龍を描くのはしんどいってことで竜宮閣にしたという。

それ以降、龍でも竜でももうどっちでも良くなっちゃったっていうのも愛しきエピソード。
まさに湯一無二のドット絵の湯だ。
まるで海を表現しているかのような青タイルの湯槽は2段になっており、浅い方はゴロンと寝転ぶ寝湯にちょうどいい深さ。

この宿の風呂は貸切で利用する為、
ひとりで大の字になって心ゆくまで大独泉を満喫できた。

ここで気になるお湯の話だが、こちらの源泉は駅前のアーケードにある福福の湯から引かれており、蛇口の出口は約50℃と高温なものの、湯槽の温度は40℃そこそことちょうどのやつ。


だが、当たり前のように浸かっているこの湯温を巡っては、大変なご苦労があることをご主人から伺った。
まず入浴時間だが、常に湧き出る源泉から引いて来ているのだから24時間いつでも入れそうなものだが、8:00〜21:00までと利用時間が決められている。

その理由はというと、福福の湯から電動ポンプを使用して湯を引いて来ているのだが、これがしばしば故障してしまうのだそうな。
そのため、トラブル回避の策として夜間はポンプを休ませているだ。

そして翌朝またポンプを動かして湯を引いてくるのだが、この時の福福の湯から宿までのパイプ内の湯は冷めきっており、冬の今の時期だと30分も流し続けないとお湯が出てこないとのこと。
ドット絵の湯の大きな湯槽に湯を溜めるにはそこから2〜3時間もかかるそうだ。
そこで朝イチで客人に湯を楽しんでもらう為には、まず小さい方の扇風呂を溜め、そこからドット絵の湯を溜めるという作戦を取られている。
そう、つまりこの扇風呂の小さな湯槽の存在が、早朝のこのタイミングで一番輝くのだ!

この作業を毎日早朝から始め、溜めてる最中にも極力湯温が下がらないよう保温マットを浮かべる配慮など、主人の湯守り話に湯温以上に胸がアツくなる。。。

こんなありがたい湯は何度だって入りたいぜ。
昼間に湯をいただき、昼過ぎから酒場へと繰り出していたが、
もう一度ドット絵の湯に入りたくてお風呂の営業終了間際に宿へ戻って来た。


昼間は気づかなかったが、どうやら風呂場の電灯が点かないようだ。
まぁいいやと薄暗いなか風呂場へエントリーすると、、、


窓の外から差し込む街灯の灯りが風呂場を最小限に照らし、
ドット絵の浦島太郎だけを浮かび上がらせていた。
まるでスポットライトを背に受ける浦島太郎。

もしかしたらこの絵は、
この街灯に照らされて初めて完成する作品なのかもしれない。

龍宮城は果たして浦島太郎にとっていい時間だったのかと子供の頃から思っていたが、まさにそれを表現するかのような陰と陽のライティングだ。
奇しくもこの灯りは、先述した映画『火花』の劇中で浦ちゃんが転げ落ちたあの階段の街灯から照らされているもの。

まるで浦島太郎の転落ストーリーをハイライトするかのような街灯だ。。。
そんなことを思いながら、
深海のような薄暗い湯槽の中でのんびりと大独泉をキメた。

チェックアウトの朝。

ご主人に挨拶をすると、
また来てね。と見送って頂けた。

さすがに玉手箱は渡されず、お爺さんになることはなかったが、
玉手箱の代わりに玄関の扉をそっと開けると、
柔らかい朝日がほんの少しだけ成長した僕をそっと包んでくれた。
たくさんのドラマが詰まった百年旅館にいろいろ教えてもらえた旅だった。

最後にインスタにあげたショート動画もどうぞ♪
龍宮閣


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