2日後に少し遅めの冬休みを控えた昼下がり。
今回の旅は熱海の旧赤線地帯界隈でカフェー建築でも見学しながらふらっと飲み歩いてみようかと思うのだが、
そういえばあの辺りにもまだ旧赤線地帯の面影が残っていたよなぁと吉原一帯を思い出す。
お天気も良いし、ふらっと散歩してみますか。。。

吉原とは、現在の台東区千束4丁目付近に江戸時代から第二次世界大戦後まで存在した遊郭。


時代の変遷とともに遊郭から赤線、赤線から日本一のソープランド街へと姿を変えた、今でも独特なオーラを放つ妖艶な街だ。



その片隅には忘れ去られたような、
いや、忘れようにも忘れることができないような建物が静かに佇んでいる。


アール状の庇やタイル張りの壁、丸や扇形の格子の付いた飾り窓など、特殊な装飾が際立つ建築物、それがカフェー建築。



マスミと屋号をデカデカと貼り付けた看板建築なんて、マニアが泣いて喜ぶ一軒だ。


カフェーとは、第二次世界大戦後の1946年、GHQの公娼廃止司令によって遊廓が廃止された後に、警察の管理のもと売春が黙認された飲食店。
諸説あるが、その飲食店が集合した遊興エリアを警察が地図上に赤い線でぐるっと囲ったことから『赤線』と呼ばれるようになったそうな。
そして今から68年前の1958(昭和33)年、売春防止法の施行によって赤線は廃止され、それまで黙認されてたカフェーは一斉に廃業へと追いやられた。

その建物はアパートなどの住宅や他業種に引き継がれていったが、近年、老朽化とともに静かに姿を消しつつある。。。

ウンチクが長くなってしまったが、そんな昭和の忘れ形見のようなカフェー建築探しが、今また数年ぶりに僕の中でグッときちゃってるのだ。

ひと通り楽しんだカフェー建築探しの帰り道。
そろそろ一杯飲りたいなぁとフラフラしていると、吉原大門からほど近くに一軒の寿司屋さんをロックオン。

伝説のボクサーにも勧められたような気がしたので、ちょいと寄ってみますかね♪

ガラガラっと戸を滑らせエントリーすると、豆タイルのカウンターに船底天井と、古き良き日本建築の雰囲気が漂っていた。


めちゃめちゃグッとくる内観だ。
それでは早速瓶ビールを貰って瓶提灯っ!
ぷはぁーっと喉をアルコール消毒して、今日が始まったぜ!

さてさてどんなツマミがあるのかなと見渡すと、、、

あら、こんなところにフーテンの寅さんが。


つい先日御徒町でお会いしたばかりなのに、またこんなところでも合っちゃいましたねぇ♪
街ブラの大先輩、寅さんがここの暖簾をめくってらっしゃるってことは、これはアタリの予感しかない。
先発で頂いたのはカマ塩焼きとアジのなめろう。
ふんわり焼き上げられたブリカマがこれまた絶妙な塩加減で、いつまでもビール片手にホジホジしていたいやつ。


なめろうは新鮮なアジを叩きすぎず、ちょうどの食感を残すように丁寧に叩きあげられた、まさに大将の芸術作品。

中サイズのアジ2匹を使った文句なしのボリューム感で、チビチビやってたんじゃぁなかなか減っていかない量だ。

え、そんなにあったら食べ飽きるんじゃないかって?
その心配はご無用。
『良かったらこれ使って』
と差し出されたのはなんとお酢。

なめろうはそれ自体に味噌で味が付いているので、そのままいただくかちょろっと醤油を垂らすのがいつもの食べ方だが、
大将に勧められるがままに酢をちょこんと付けて口の中に放り込んでやると、、、

むほほほ〜!
そうきましたか!!
酢の爽やかな酸味がどこかずっしりとした食感のなめろうを軽やかにし、
昔はあんなにあどけなかったのに
気がつけばバッチリメイクでメルセデスのGクラスを乗り回してる
高梨沙羅ちゃんぐらい垢抜けてきやがる!
これは余裕でツマミのK点超えっ!
ずっと舐めていられるぜ、沙羅ちゃん♡

このなめろうでばっちりエンジンがかかったぜ。
もうお寿司もお願いしちゃいましょ。
上握りをお願いしますっ!と発声すると、目の前に整列したのはご覧の通りの7貫の握りと鉄火巻きのコンビネーション。


はじけるイクラにトロっトロのトロ。



イクラでお召かしした赤貝がベッピンさんだ。

口福とはまさにこのことで、気がつけばあっという間に握りたちは目の前から蒸発してしまった。
久しぶりのウマイ寿司に大満足だ。
これで終わっても良いが、何かもうひとついっときたいな。。。
あ、あれいいじゃない、茶碗蒸し!

大将に茶碗蒸しをお願いすると、少し時間がかかるよとのこと。
いいんですいいんです、時間となめろうはたっぷりとあるんで。



のんびりとなめろうをつまみながら、改めて店内を鑑賞していると1枚のポスターに目が留まった。

ん?
68年前に開業?
ってことは・・・。
大将、つかぬことをお聞きしますが、
68年前に開業されたとのことですが、それってちょうど赤線が無くなった頃ですよね?
そうだねぇ、それまで先代がそっちのほうで別の商売やっててねぇ、
赤線が無くなると同時にここで寿司屋を始めたんだよ。
え、、、ていうことは、さっき散歩してて『マスミ』っていう建物を見つけたんですが、
もしかしてあれって、、、
そうそう、そこを辞めてここで商売を始めたんだよ。

なんてこった。。。
満す美寿司の先代は、ついさっき僕が鼻息を荒くして探し求めてた赤線地帯のカフェーを経営されてたと言うのだ。

さらに大将にお話を伺うと、
当時のカフェー建築の職人が最後にその技術を残したいということでこの店の内装を手掛けたとのこと。
かつては立ち食いで手を洗いながら寿司をツマんだと言うこのカウンターの豆タイルこそが、まさにカフェー建築のDNAを引き継いでいるのだ。


そんなエピソードにもまた鼻息を荒くしているとお待ちかねの茶碗蒸しがすぅーっと到着。

ふんわりと丁寧に蒸しあげられた女将さん特製のそれは、きめ細やかな白肌で艶めかしい。

そっと掬いあげ口に運ぶと上品な香りを漂わせ、儚くも優雅に消えていった。
なんてベッピンさんなんだ。
大昇天したぜ。。。

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この日から約3週間。
いまようやくこの記事を書き終えようとしているが、こうしている今でもあの茶碗蒸しがとても恋しい。
まさに、お気に入りのカフェーを見つけ、素敵な女給さんに出会ってしまったかのようなカフェー建築探しの〆にぴったりの夜だった。


満す美寿司







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