登録有形文化財に泊まって飲ろうぜ!!(荻窪/旅館 西郊本館)

番外編

と、タイトルにしてみたのですが、

結論から言うとコロナ騒動以降は食事の提供を辞めてしまっており、

残念ながら旅館のお食事をツマミに飲ることは出来なくなってしまいました。。。

 

だがそこは思い立ったが吉日ってやつ。

いつかは行ってみたいとずっと気になってた昭和レトロな宿を、

なんとヨメが誕生日プレゼントとして招待してくれると言ってくれたので、

お料理は無くともその雰囲気を感じに行ってみることにしました!

 

大切なことなんでもう一回言いますね、

ヨメが誕生日プレゼントしてくれたんです(感謝)

 

突如現る西郊ロッジング。 

場所はというと東京都の西側、

杉並区の中央線荻窪駅から徒歩でだいたい7分ぐらいのところ。

住宅街を抜けていくと独特でモダンなオーラを放つモルタル建築に、

デカデカと右から左に『西郊ロッヂング』の文字がグッとくる建物が現れます。

 

 

こちらは『西郊』の新館にあたる建物で、

ロッヂング(下宿・貸し間)の名称の通りアパートメントになっている部分。

なんとここは大掛かりなリフォームを経て、

今でも賃貸アパートとして貸し出されているというから驚きです。

 

 

 

こちらの中も拝見してみたいので誰か借りてみてください笑

 

いざ本丸、旅館西郊へ。

そして今回お泊まりさせて頂くのが、

そのお隣でひっそりと営業されている『旅館西郊本館』さん。

 

 

洋風な西郊ロッヂングとは対照的に純和風の佇まい。

今からこの中の空気を吸えると思うとゾクゾクが止まらない。。。

 

 

ガラガラっと引き戸を滑らしさっそくエントリーすると、

高齢の支配人ご夫妻がにこやかに迎え入れてくださった。

 

まずは簡単な宿泊手続きを済ませ、

桜の寄木細工の床、船底天井の廊下などなど、

館内のレトロさをビンビンに感じながら支配人に部屋まで案内して頂く。

 

 

桜の寄せ木細工の床。

 

 

船底天井の廊下が続く。

 

どこもかしこも期待を裏切らないバキバキっぷりだ。

 

 

 

 

もちろん部屋のカギだってよくあるシリンダー錠なんかじゃぁございません。

一見、手錠用かと思わせるようなシンプルな棒状の鍵ですが、

その操作方法が特殊すぎて支配人に教わらないと扱うことができないという初見殺しタイプ。

 

 

そうなると支配人そのものも鍵の一部、

まさにキーマンですね。

 

 

解施錠方法を教わり、いざお部屋へエントリー!

窓の外は敷地全体が見渡せるビューで、

中庭を囲うようなコの字型

酒場のカウンター同様にグッとくるものがある。

 

 

ダイヤル式電話にもグッとくる。

 

部屋にはすでにお布団が敷かれており、

それぞれの布団には電気毛布が投入されていた。

 

 

 

そっと布団の中に手を入れると

就寝にはまだ早い時間だというのにもう暖かい。

どうやら今夜は電気毛布だけじゃなく、

こんな支配人のおもてなしのココロが、

まだ少し肌寒い夜を温めてくれそうです。

 

 

館内探検へGO!

ひとしきり部屋の鑑賞を済ませたら、

さっそく館内探検へGO!

 

 

 

 

 

 

先ほど受付を済ませたロビーには、

マントルピースの暖炉やMITSUBISHIの扇風機、

風格漂う間接照明やソファなど、

そのどれもが時代の流れをギュッと濃縮して一身に纏い、

レトロ好きな僕の目を惹きつけて離さなかったが、

何よりも瓶ジュースの自動販売機が特筆モノ。

⁡ 

 

薄暗い自販機コーナーでひときわ輝きを放ち、

老いてなお現役で戦い続けるその姿は、

自動販売機界の三浦知良か。

 

自販機界のキングカズ!

 

せっかくだから1本と扉を開けてみてさらに悶絶。

この愛くるしい手書きのフォント達よ。

 

 

ファンタグレープかと思ったがよくよく見ると

ファンタグレイプという可愛らしさ。

 

 

なぜにこれだけ赤文字なのだろうかと、

そんなどうでもいいような小さなナゾに

愛しさが溢れてくる。

⁡ 

気になるお風呂。

宿泊といえばやはり気になるのがお風呂でしょうか。

 

 

 

 

 

これまたバキバキな脱衣所を経て、

チラッと見えたのは一般的な家庭の浴槽と変わらないサイズ感の湯船。

⁡ 

 

こちらのお風呂は貸切での利用となり、

入浴の30分前に女将さんにお願いすると湯を張ってくれるとのこと。

⁡入浴時間は24:00までなので遅くとも23:00までには声をかけて欲しいとのことでしたが、

⁡夕飯を駅前の飲み屋でハシゴし、部屋でダラダラとしているうちにタイムアウト。

これは残念でした。。。

⁡ 

 

⁡ちなみに入浴しなかった場合は1人あたり宿泊代から500円の返金アリ。

なんだかちょっと申し訳無かったかなぁ。。。

⁡ 

 

スタンド照明と目覚まし時計の昔懐かしさをツマミに

缶ビールをキメて静かに就寝しました。。。

 

 

夜の玄関もステキでした。

 

いにしえの波板ガラス。

今回旅館西郊を訪れるにあたって僕なりに予習を重ねてきたわけですが、

過去に宿泊された方々の記録の中でその存在を知り、

どうしても見ておきたいものがありました。

それがこちらの波板ガラス。

 

女将さんに案内してもらいました。

 

ガラス越しの正面ビュー。特に歪みはないですよね?

 

今はもうほとんど使われていないエリアの廊下に張られ、

正面から見るとなんてことのないただのガラスに見えるのですが、

ある角度からこのガラス越しに庭を眺めると景色が揺らぎ始めるのです。

 

この角度が分かりやすいですよと女将さん。

 

それはまるでドラえもんのタイムマシーンに乗り、

昭和へとタイムスリップする過程のようにも。

 

 

正面からも波状がわかるタイプの波板ガラスは、

少なくなったとは言え今でも作られていますが、

このある角度から揺らぐという波板ガラスは大変貴重なものだとのこと。

 

 

数年前に酔客がこのガラスに衝突して割ってしまったこともあり、

このガラスの貴重さを伝えながらも、

普段はこちらのエリアは使用されていないとのことでした。

 

 

ここは予習しないと触れることが出来なかったビンテージ鑑賞ポイントです。

⁡ 

これぞ真骨頂!?鎮座するあのクルマ。

そして最後の極め付けは廊下から見えてしまったコチラ。

 

 

視界にチラッと入ったこの車を僕は見逃しはしませんでした。

支配人にお願いしてガレージを見せてもらうと、

なんとそこに鎮座していたのは

日産自動車と合併したプリンス自動車工業の

グロリアスーパー6!

 

 

もはや、レトロやビンテージなんて言葉の向こう側、

クラシカル、いや、ヘリテージっ!!

 

⁡ 

 

驚くべきは今でも現役で支配人が乗られているということだ。

⁡ 

 

いや、すごくないですか?

ホコリだらけだけど、ガレージにあるよ。

じゃなく、

あ〜今もたまに乗ってますぅ〜。

ってことが。

⁡ 

 

お話を伺うと60年以上前に新車で購入した車で、

それはそれは大切に乗られて来たとのこと。

まず雨の日とカンカン照りの日は絶対に乗らなかったそうな。

それでも出先で雨に降られてしまうこともあるわけだが、

たとえどんなに深夜だろうと帰宅後は車の下に潜り、

全ての泥を落としてから就寝していたとのことだ。

『買い替えようなんて一度も思ったことがないんです』

そう仰る支配人にただただ脱帽だ。

 

⁡ 

楽しい時間はあっという間に。

女将さんにビンテージな波板ガラスを、

支配人にヘリテージなグロリアを紹介して頂いたところで

ちょうどチェックアウトの時間。

館内どの場所を切り取っても本当に趣深い旅館でした。

 

 

 

昭和6年にこの旅館西郊をオープンし、

7年後の昭和13年に新館の西郊ロッヂングがオープン。

今年がちょうど昭和100年だから、

実に90年を超える西郊の歴史がくすぶることなく刻まれていました。

 

 

これまでの歴史の中で、

この建物を取り壊して大きなビルに建て替えを。

という話が無かった訳ではないとのことですが、

東京大空襲を逃れたこの貴重な建物を残して欲しい

という多くの声に支えられ今に至っているとのことです。

 

 

が、やはり僕は先ほどの支配人が愛車に向けた言葉、

買い替えようなんて一度も思ったことはない

に西郊の全てがあると思うんですよね。

 

どこまでもモノや道具と大切に向き合う支配人はきっと

建て替えようなんて一度も思ったことはない

実はずっとそう思っているんじゃないのかな。

憶測ながらそんなことを思ってみたりも。

⁡ 

 

この貴重な登録有形文化財で過ごした時間は

酒は無くとも西郊の歴史に深く酔いしれることができた貴重な経験となりました。

願わくば、いつかまたお料理が再開されたら、

そのときは一杯飲りに再び訪れてみたいなと思います。

 

終始笑顔で説明をしていただいた支配人と女将さん、

最後までご丁寧にありがとうございました。

⁡ 

 

またいつか、

お邪魔させていただきます。

 

 

宿の予約は怪しい宿泊サイトでは無く、直電が確実で最安です。ぜひ♪

 

 

旅館 西郊本館

完読ありがとうございました♪

コメント

タイトルとURLをコピーしました