ちょっとした用事があって久しぶりに訪れた人形町。
用事を終えて真っ先に加島酒店へ向かったが、
残念ながら明かりはついているもののまだ口開け前。
一旦近所の町中華・紅菜館で
疑惑の五目チャーハンと
ひとり戯れたところまでが前回のお話。
少し時間を空けてから再び訪れてみると、
先程まで静まり返っていた空間が、
ご満悦の先輩達で溢れ返っていた。
そこらのお嬢ちゃんなら尻込みしてしまいそうな光景だが、
僕クラスのオッサンになるとゾクゾクが止まらない光景だ。
ガタガタっとガラス木戸を滑らせ一歩その中へと踏み込むと、
そこはもう『昭和レトロ』のたった一言では言い表わせない、
いぶし銀の世界。
アメ色の酒棚は天井までそびえ立ち、
威風堂々たる『塩小賣所』の旧漢字看板が
酒飲みたちを俯瞰する。
それだけじゃない、
酒棚の最上段には1980年代の販促グッズのダンボールが当たり前のように並び、
戸棚の中にはサントリーオールドの干支ボトル(寅・1986年)が2体も鎮座する。
その隣のデュワーズのイギリス近衛兵型の置物なんて
調べてみてビックリ、1960年代の代物だ。
この昭和の忘れ形見とも言える存在ひとつひとつが主張し過ぎることなく、
見事に景色に溶け込んでいる。
僕は古い建築物が好きで、
小金井市の江戸東京たてもの園に何度か足を運んだが、
その度にいつも抱いていた
ここで飲めたらいいのにな
の欲望がここでほぼ叶えることが可能だ。
まさに飲れる江戸東京たてもの園と言っても過言ではないだろう。
どこまでも続くこのレトロの向こう側感に
ゾクゾクが収まる気がしないぜ。
さぁ、さっそくこの景色をツマミに一杯飲らせてもらいますか。
先程の紅菜館ですでに腹の虫は大人しくなっているので、
テキトーなヤツをツマミ棚から選び、
現代的な冷蔵庫から大瓶を取り出す。
すいません、これ下さ〜い!
お会計をしようと僕の呼びかけで姿を現した店主もまた、
ただならぬレトロの向こう側感が漂う。
背後の雑多な書類達も
いやぁ〜
関東大震災の揺れで崩れてきちゃってさぁ
なんて言われたら今なら信じてしまいそうだ。
ふと視線を落とせば緑青浮かぶ小銭たち。。。
それは和同開珎ですか?
寛永通宝ですか?
例えそこから2、3枚出てきたってそんなに驚かないぜ。
いや、やっぱそれは驚く笑
『開運!なんでも鑑定団』の中島誠之助センセとここでグラスを重ねられたら
大盛り上がり必至だろう。
まるでタイムスリップしたかのような加島酒店。
こんな素晴らしい酒場を
未来の酒飲み達にも残せたらいいのになぁ。。。
そんな淡い期待と妄想が
アメ色の瓶の提灯とともに儚げに膨らんだ。
加島酒店
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