山梨の酒場巡り、最終夜に訪れたのが
1964年創業で今年60周年を迎えた
老舗酒場のくさ笛さん。
甲府に来たら必ず寄りたかった酒場だ。
席はカウンターのみで、
どこか有楽町や新橋のガード下を思わせるような雰囲気。
さっそくカウンターに腰を下ろし、
お母さまに瓶ビールをお願いすると
最初の1杯は注いでくれるとのこと。
これは嬉しいやつ!
ほらグラスもって〜
ほらほら、最初は斜めに傾けて〜
ほらほらほら、グラスを立てて〜
ほらほらほらほら、、、
この道60年の大ベテランのお母さまの指示に従い、
熟練の技をもってして完成したのは、
シチサンの黄金比なんてぶっ飛ばすビジュアルの
キレイなジューゼロ!
はいもう楽しい〜♪
今宵の勝利が開幕2分で確定した瞬間だった。
ぐいっとグラスを傾けてひと息つき、
短冊メニューたちとにらめっこ。
やっぱ甲府と言えばとりもつか、、、
かちりおろしってなんだ?
くさ笛どっこも気になるぞ。。。
ていうかどっこってなんだ?
よくわからないが、店名を冠したものは自信作に違いない。
お母さますいません、
くさ笛どっこひとつっ!
やがて到着したのは豆腐の上にマグロのたたきが乗り、
その上に薬味がふぁさっと降りかかる
ビールにも日本酒にも合うマルチプレイヤー。
お母さまにどっこの意味を伺うと
どっこいしょ!って乗せたからよ!
と教えていただけたが、、、
・・・ホントだろうか、、、??
ネーミングの由来にはいささか気になる点が残るが、
くさ笛どっこの短冊の下にも、もうひとつ気になるものがある。
お母さまのお名前が書かれた泡盛だ。
トーヨーコ?
あ、トーヨコ?
いやそれじゃ家出少女だわな。
おそらくトヨコさんだろう。
どちらにせよ、お母さまのお名前を冠したものも自信作に違いない。
せっかくだから頂いてみようか。。。
ついでだからお名前も呼んでみようか。。。
お母さま!その泡盛1杯下さい!
アンタこれ飲めるの?
あ、はい、泡盛飲めます!
どのくらい飲むの?
こんくらい?
ん?
こんくらい???
30度の泡盛をものすごい勢いで注ぐお母さま。。。
ちょ、、、
いやこれもう、
お冷やの量じゃないすか〜!!
完全に致死量の泡盛が目の前でキラキラと輝き始めた。
ちょ、トヨコさん!
僕を酔わせてどうするつもりですかぁ〜!
テンション高めにしれっとお名前で呼んでみると
どうしようかねぇ、
連れて帰ろうかしら♡
と、まんざらでもないご様子だ。
こ、ココロの準備しときますっ!
そんなやりとりにお母さま、
いや、トヨコさんが笑ってくれた。
初対面の年輩の女性をお名前で呼ぶって
なんだかちょっと照れ臭いけど、
グッと距離感が縮まってなんかいいな。
サンマの塩焼きをアテにのんびりチビチビと飲っていると、
次第に常連さん達が増えて来た。
お母ちゃ〜ん!おれどっこ〜!
あ、お母ちゃん!こっちもどっこね!
あとサバの味噌煮も〜
お母ちゃんオレもサバミソっ!
どうやら常連さん達はトヨコさんのことを
お母ちゃんと呼ぶらしい。
お母ちゃんかぁ。。。
確かに威勢のいい鉄火肌のトヨコさんを
まるで実家に帰って来たかのような気持ちでそう呼ぶことは
ごく自然なことだろう。
いまようやくお母さまからトヨコさんに昇格できたばかりだが、
もう1階級挑戦してみようかな。
なんかすんげー照れ臭いけど、、、
・・・いってみるか。
すいませんっ!!
おかぁ・・・
・・・サマ、、、
サバミソヒトツ。。。
あいよー!
・・・負けた。
照れ臭さに負けた。。。
その後も何度かトライしたが、
どうしても照れ臭かった。。。
おかぁ、、、
・・・さま、オアイソで〜
あいよー!!
また来てねー!!
結局一度もお母ちゃんと呼べなかった。。。
オッサンになるにつれ、
照れや恥じらいなんてどこかに落っことして来たと思ってたけど、
まだまだ残ってるもんだなぁ。。。
そんな事を思いながら翌日帰宅すると、
デスクの上に名古屋旅行に行ってたムスメからのお土産が置いてあった。
お父ちゃんへ
おみやげ!!
ハタチになってもいまだに恥じらうことなく
お父ちゃんと呼んでくれるムスメがここにいた。。。
照れてる場合じゃなかったな。。。
毎年春になるとお母さま自ら採ってくる
山菜の天ぷらが絶品とのこと。
来年の春までに発声練習しとかないとだな。。。
お母ちゃん!
僕にも山菜のてんぷらっ!!
次はちゃんと呼べるように。
くさ笛
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