この度、大阪の街まで遥々と遠征してきたのだが、
酒場以外にもどうしても立ち寄りたかった場所がひとつだけあった。
それは平野区にある風呂屋、『末広温泉』。


大阪一熱い風呂を謳い、
45℃〜46℃という高温の温浴を1分、
キンキンに冷えた水風呂の冷浴を1分、
そしてまた温浴を1分と、
『温』と『冷』を交互に入浴する『温冷浴』を
独特の世界観で推してくるお風呂屋さんだ。

ちなみに、風呂も人生もぬるま湯が好きな僕には
温も冷もなかなか耐えがたいものだが、
それでもここに来たかった理由がもうひとつ別にあった。
実際にここの浴場内に掲げられてる、
あのメッセージのキーホルダーが欲しかったからだ。

湯温もキーホルダーも外観のメッセージも、
全てが激アツの末広温泉だった。

さて、
大阪の平野という街まで
このキーホルダーの為にふらりとやってきたのだが、
せっかくなのでこの辺で一杯、湯上がり酒を飲ろうじゃないか。
こんなシチュエーションで頼りになるのが、
他ならぬ酒場ナビ兄さんのサイトだ。
この近所に酔さそうな酒場は無いかと検索してみると、、、
お、あったあった!
ここにお邪魔してみますか!


乾ききった喉を引っ提げて歩くこと約20分、、、
はいロックオンっ!
綿安酒店っ!!

近代的な住宅地の隙間でひっそりと佇む姿にゾクゾクが止まらない。

ガラス扉の中ではすでに黒帯な先輩達がウヨウヨしてらっしゃるが、
ここまで来てビビってる場合じゃないぜ、
意を決していざエントリーっ!


大型冷蔵庫こそ近代的なものの、
やはり店内は外観から想像した通りのバキバキ感。
早速大瓶を頂いて瓶提灯っ!

からの、
ごきゅーっ!!

風呂上がり後イッパツ目の液体が、
乾いたスポンジのような五臓六腑にぐいぐいと染み込んでいきやがる。
風呂上がり直後のビールもウマいが、
グッとこらえて最初の一杯に想いを馳せながら歩いたぶん、
ウマさが爆増しているぜ。
E = I × R
酒を愛(I)しながら歩(R)いたぶんだけ、
いい(E)酒になる。
勉強熱心な僕は中2理科のオームの法則からすでにそのことは学酒う済みさ。
カラッカラのボディを湿らしたところで、
アテは何がいいかとキョロキョロしていると、
お隣にいらっしゃった常連さんから一枚の紙が回って来た。

シャケにアジ開きにサバ塩焼と、
酒屋の角打ちでは珍しくしっかりとしたツマミがラインナップされている。。。
おっ!
がしらがあるぞ!
がしらとは関東でいうところのカサゴで、
個人的には刺身なんかよりも唐揚げや煮付けのほうが断然うまい魚だ。
コイツに決めたぜ!
お父さまっ!
がしら煮付けお願いします!
え?湯豆腐がオススメ?
あ、じゃぁそれも!
親切にも常連さん達に推しのツマミを教えて頂いたので
ついでにこの店のことも聞いてみた。

ここ平野という土地は、
かつては河内木綿を扱った綿業で栄えた歴史があり、
この店ももともとは綿屋さんだったそうな。
ところがある時、
どういうわけか飲める酒屋さんに華麗にジョブチェンジし、今に至るとのことだ。
なるほど、
それで『綿安酒店』なんですね!

そんな生い立ち話をツマミにのんびりとグラスを傾けていると、
お待ちかねのがしら煮付けが着皿、、、

って、うわっ!
めちゃめちゃお上品っ!

僕はてっきり、そのへんのスーパーのお惣菜を温め直したヤツが出てくるだろうと勝手に思い込んでいたが、
コレは間違いなくちゃんとここで調理されてるヤツだ。
煮汁が染みわたったアメ色な煮魚も好きだが、
まだ染み込みきっていない純白ふわっふわの身に煮汁を絡めながら頂くのも、
素材そのもののウマ味を感じれて好きだ。

ちなみに、僕自身が魚を捌くのが好きなので近所の魚屋に良く行くのだが、
だいたいマルのがしらで1匹600円、700円はザラにする。
手間暇かけて煮付けて、菜の花まであしらえて650円て、、、
ほぼ原価ですよね、これ。。。
あまりのウマさに無心にがしらを突っつき、
ちょうど大瓶と戦い終えてチューハイをお願いすると、
今度はナイスタイミングで湯豆腐がやってきた、、、
って、えぇっ!
これが湯豆腐っ!?

そこまで裕福ではない家庭に育った僕が知っている湯豆腐とは、
昆布が一枚沈んだ鍋の中に、ただ豆腐が浮いてるだけのヤツをそう呼び、
タラなんぞの白身魚が一切れでも入っていれば上等なものだった。
それが、、、
長ネギ、エノキ、マイタケが豆腐と共に湯に沈み、
その上にはトロっと、とろろ昆布がひとつかみ。
ほじくってみると上等素材のタラの身が出て来たかと思えば、

その下からはなんと大粒のカキがぶりんっと一粒!

この湯豆腐界のオールスター盛りがなんとたったの500円って、、、
完全に原価割れだろう。。。
これは味もお値段もそんじょそこらの居酒屋を遥かに超えているレベルだ。
いったい何処からこんな料理が出てくるのかとずっと気になっていたが
おトイレをお借りした際にその疑問が解けた。

酒屋の裏手で可愛らしいお母さまが、
ひっそりと愛情込めて手料理をこさえて下さっていたのだ。


ココ知ってもうたら、
もうヨソには行かれへんで。
常連客達は口を揃えてそう言っていたが、
大袈裟ではなくホントその通りだ。
間違いなく角打ち界トップランカーのHOTな酒場だろう。

綿安酒店でお母さまの手料理を食べずに帰る人は
末広温泉で温冷浴せずに
シャワーでオチンチンだけ洗って帰るのと同じ。
こんなキーホルダーが売られるのも時間の問題だ。

平野という土地は
大阪一熱い風呂と
角打ち界一アツイ酒屋が隠れている
とにかく激アツな街だった。

綿安酒店
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